
AIを支える「知識の時代」
人工知能(AI)の歴史は、幾度もの盛衰を繰り返しながら発展してきました。その中で、「知識の時代」と呼ばれる時期は、AI開発に革新的な進歩をもたらした重要な時代として位置づけられています。これは、1970年代から1980年代にかけて起こった第二次AIブームと密接に関係しています。第一次AIブームでは、コンピュータによる推論や探索といった能力に注目が集まり、特定の問題解決に特化したプログラムが開発されました。しかし、現実世界の複雑な問題に対応するには限界がありました。そこで登場したのが、「知識」の概念を取り入れたAIです。人間の専門家のように、大量の知識を蓄積し、それを基に推論や判断を行う「エキスパートシステム」が開発されました。例えば、医療診断支援システムや化学物質の分析システムなどが実用化され、AIは特定の分野において人間の専門家を超える可能性を示しました。この知識の時代は、AIが特定のタスクだけでなく、より人間に近い知能の実現を目指す転換点となりました。しかし、知識の表現方法や獲得の難しさ、状況の変化への対応力の不足など、新たな課題も浮き彫りになりました。これらの課題は、後の機械学習や深層学習といった技術の登場によって克服されていくことになります。