勾配

画像解析

Grad-CAM:AIの判断を可視化する技術

人間が目で見て物事を判断するように、人工知能にも画像を理解させる技術が進歩しています。それが「画像認識」と呼ばれる技術です。人工知能は、大量の画像データから特徴を学習し、写真に写っているものが「犬」なのか「猫」なのかを判別できるようになります。しかし、従来の人工知能は、膨大なデータの中からどのようにして答えを導き出したのか、その根拠を人間が理解することは困難でした。これはまるで、経験豊富な専門家が何も言わずに結論だけを述べるようなもので、何故そう判断したのかが分かりませんでした。そこで登場したのが「Grad-CAM」という技術です。Grad-CAMは、人工知能が画像のどの部分に着目して判断を下したのかを、人間が理解できる形で可視化します。 例えば、人工知能が一枚の写真を見て「これは犬です」と判断した場合、Grad-CAMを用いることで、人工知能が「犬の顔」の部分に注目して判断したことが分かります。従来の人工知能が「ブラックボックス」と呼ばれ、その内部の仕組みが分かりにくいとされていたのに対し、Grad-CAMは内部の判断過程を明らかにすることで、人工知能の信頼性を高める鍵として期待されています。
アルゴリズム

学習を加速させるモーメンタム

- モーメンタムとは 機械学習、特に深層学習では、膨大なデータを使って、まるで人間の脳のように情報を処理するモデルを作ります。このモデルの性能を最大限に引き出すためには、膨大な数の調整つまみ(パラメータ)を最適な値に設定する必要があります。しかし、このパラメータの調整は非常に困難であり、効率的な探索手法が求められます。 このパラメータ探索を効率的に行うための手法の一つとして、モーメンタムと呼ばれる方法があります。モーメンタムは、1990年代に提唱された最適化アルゴリズムの一種で、勾配降下法という基本的な手法を拡張したものです。 勾配降下法は、パラメータ空間において、最も急な坂道を下るようにパラメータを変化させていくことで、最適な値を見つけ出す方法です。しかし、この方法には、谷間のような平坦な領域に陥ると、最適な値にたどり着くまでに時間がかかってしまうという欠点があります。 そこで、モーメンタムは、パラメータの変化に「慣性」の概念を導入することで、この問題を解決しようとします。これは、まるでボールが坂道を転がり落ちるように、過去の変化の勢いを現在の変化に加えることで、平坦な領域でも速度を落とさずに探索を進めることができます。 このように、モーメンタムは、勾配降下法の弱点を克服し、より効率的に最適なパラメータを見つけ出すことができる強力な手法として、深層学習をはじめとする様々な機械学習の分野で広く利用されています。