作業の見える化：ワークサンプリング法入門

作業の見える化：ワークサンプリング法入門

ワークサンプリング法とは

– ワークサンプリング法とはワークサンプリング法は、ある特定の作業や工程において、作業者や設備の状態を、一定の時間間隔で瞬間的に観察し、その状況を記録していく手法です。まるで抜き打ちで調査を行うように、ある瞬間の状況を切り取って記録していくことから、「抜き打ち調査法」と呼ばれることもあります。この手法を用いることで、例えば、一日の業務時間の中で、それぞれの作業にどれくらいの時間が費やされているのか、といった作業時間の配分状況を把握することができます。従来のストップウォッチを用いた時間研究では、詳細な作業時間や手順を記録することが可能でしたが、観察対象者に負担が大きく、正確なデータを取得することが難しいという側面がありました。一方、ワークサンプリング法では、観察者が特定の時間に観察対象者の業務内容を記録するだけであるため、観察対象者への負担が少なく、より自然な状態でのデータを取得することができます。また、設備についても、稼働状態と停止状態を記録することで、設備の稼働率や停止時間の割合を把握し、設備の効率的な運用や改善に役立てることができます。このように、ワークサンプリング法は、比較的簡便な方法で、作業者や設備の稼働状況を把握できる有効な手法と言えるでしょう。

時間研究との違い

– 時間研究とワークサンプリング法観察の違い従来の作業時間測定といえば、ストップウォッチを用いて作業時間を細かく計測する時間研究が主流でした。これは、作業の開始から終了までを逐一記録することで、各作業にどれだけの時間がかかっているかを正確に把握しようとする方法です。しかし、この方法には、時間と労力を要するという大きな欠点がありました。担当者は対象となる作業員の作業に張り付いて観察し続けなければならず、さらに、記録したデータを集計して分析するにも膨大な時間がかかっていました。また、観察される側の心理的な負担も大きいという問題もありました。常にストップウォッチで監視されているという状況は、作業員に大きなプレッシャーを与え、本来の作業パフォーマンスを発揮できない可能性も孕んでいたのです。一方、ワークサンプリング法は、これらの問題点を克服する画期的な方法と言えるでしょう。この方法は、瞬間的な観察を繰り返すというシンプルな手法に基づいています。例えば、1日に数十回、ランダムな時間に作業現場を観察し、その瞬間に作業員が何をしているかを記録するのです。この方法であれば、時間研究のように常時観察する必要がなく、担当者の負担は大幅に軽減されます。さらに、観察される側の作業員にとっても、心理的な負担は軽減されます。常に監視されているわけではないため、より自然な状態での作業が可能となり、精度の高い分析結果を得やすくなるのです。このように、ワークサンプリング法は、時間研究に比べて、時間と労力を大幅に削減し、かつ、より自然な状態での作業分析を可能にする画期的な方法と言えるでしょう。

ワークサンプリング法のメリット

ワークサンプリング法は、業務改善や生産性向上のための有効な手法として知られていますが、そのメリットは時間と労力の削減、観察される側の負担軽減だけにとどまりません。

まず、ワークサンプリング法は、多様な業務や設備に適用できる汎用性の高さも大きな魅力です。製造現場における作業工程の分析はもちろんのこと、事務作業や営業活動など、あらゆる業務において、時間配分や作業内容の実態を把握するために活用できます。また、特別な設備や装置を必要としないため、導入が容易である点もメリットとして挙げられます。

さらに、ワークサンプリング法で得られたデータは、統計的に処理されます。これは、客観的な分析が可能になることを意味し、感覚的な判断に頼ることなく、より確実性の高い改善策を立案することができます。具体的には、作業時間の短縮や無駄な作業の排除、作業効率の向上など、具体的な目標を設定し、その達成度合いを数値で確認しながら、改善活動を進めていくことができます。

このように、ワークサンプリング法は、その汎用性と客観的な分析に基づく改善活動への貢献度合いから、多くの企業にとって、非常に有用な手法と言えるでしょう。

ワークサンプリング法の実施手順

– ワークサンプリング法の実施手順

ワークサンプリング法を正しく実施するには、いくつかの手順を踏む必要があります。まず、何のために、誰を対象に観察を行うのか、目的と対象を明確にしましょう。観察の目的が曖昧だと、収集するデータも曖昧になり、 meaningfulな分析結果を得ることができません。

目的と対象が決まったら、次は観察項目と基準を具体的に設定します。例えば、「作業時間」を観察項目とする場合、「歩く」「書く」「話す」「操作する」「その他」のように、具体的な行動に分類します。そして、それぞれの行動を「作業」と判断する基準を明確にします。基準が曖昧だと、観察者によって結果が異なり、正確なデータが得られなくなってしまいます。

観察項目と基準が決まれば、記録用の観察票を作成します。観察票には、観察日時、観察対象、観察項目などを記入する欄を設けます。その後、適切な時間間隔で観察を行い、観察結果を観察票に記録していきます。時間間隔は、観察の目的や対象によって調整する必要があります。

全ての観察が完了したら、集計作業を行います。集計したデータに基づいて分析を行い、現状の把握や問題点の発見に努めます。最後に、分析結果を踏まえて、業務効率の改善や標準作業手順書の作成などの改善策を検討します。

活用事例

– 活用事例

ワークサンプリング法は、工場などでの作業分析だけでなく、オフィスワークの業務内容を分析するのにも役立ちます。

例えば、事務作業にどのくらいの時間がかかっているのかを細かく調べたい場合を考えてみましょう。一日の仕事のうち、書類作成や電話対応、会議などにどれだけの時間が使われているのかを把握することで、無駄な作業を見つけて業務の効率を上げるための改善策を考えることができます。

また、営業担当者が顧客と接点を持つ時間と、社内での事務処理などに使う時間の割合を分析すれば、営業成績を上げるためにはどのような活動を増やせば良いのか、具体的な指針を得ることができます。このように、ワークサンプリング法は様々な業務に適用できる分析手法と言えるでしょう。

まとめ

– まとめ業務の分析や改善は、企業にとって重要な課題ですが、従来の方法では時間や費用がかかりすぎるという問題がありました。そこで近年注目されているのが、ワークサンプリング法という手法です。ワークサンプリング法は、一定の時間間隔で業務を観察し、その時点での作業内容を記録していくことで、業務の実態を把握する方法です。従来の作業分析のように、担当者に張り付いて詳細な記録を取る必要がないため、担当者の負担が少なく、短期間で結果を得られることが大きなメリットとして挙げられます。さらに近年では、スマートフォンアプリを活用したデータ収集も可能になりました。従来は、観察者が直接記録するか、ストップウォッチなどの機器を用いる必要がありましたが、アプリを利用することで、担当者がボタン一つで作業内容を入力できるようになり、より効率的にデータを収集できるようになりました。ワークサンプリング法で得られたデータは、業務のムダの発見や、作業時間の把握、人員配置の見直しなどに活用することができます。その結果、業務効率の向上やコスト削減、従業員の負担軽減といった成果に繋がる可能性があります。このように、ワークサンプリング法は、手軽でありながら精度の高い分析を可能にする、非常に有効な手法と言えるでしょう。業務改善や生産性向上に取り組む際には、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。