AIが抱える「記号」と「実世界」の溝
- 記号接地問題とは何か?
「シマウマ」という言葉を聞くと、多くの人は白黒の縞模様を持つ馬の姿を思い浮かべます。私たちは言葉から、それが表す具体的なイメージや概念を理解することができます。これは、言葉が現実世界の物体や事象と結びついているからです。例えば、実際にシマウマを見て、その特徴や生態を知ることで、「シマウマ」という言葉は単なる文字列ではなく、豊かな意味を持つようになります。
しかし、AIにとって「シマウマ」は、私たちのように現実世界と結びついた意味を持つわけではありません。AIは、「シマウマ」という文字列を、大量のデータから得られた統計的な情報に基づいて処理します。つまり、AIは「シマウマ」という言葉が、他の言葉とどのように関連付けられているかを知っているだけであり、それが実際にどのような動物であるかを理解しているわけではありません。
このように、AIが記号(言葉や文字列)と、それが表す現実世界の事物や概念を結びつけることができないという問題を、-記号接地問題-と呼びます。これは、AIが人間のように言葉の意味を理解し、思考するためには、乗り越えなければならない大きな壁の一つです。