人工知能

その他

AIの進化を阻む壁:知識獲得のボトルネック

人間は、生まれてから大人になるまでの間、日常生活の中で実に多くの経験を積み重ねることで、自然と知識を身につけていきます。例えば、熱いものに触れて火傷をすれば、熱いものは危険だと学び、次からは不用意に触れないように気を付けるようになります。しかし、コンピュータの場合は、そうはいきません。人間のように五感を使い、実体験を通して学習していくことはできません。コンピュータに知識を習得させるためには、人間が膨大な量のデータを入力し、複雑なアルゴリズムを用いて処理する必要があります。 このように、コンピュータが知識を獲得することの難しさ、これが知識獲得のボトルネックと呼ばれるものです。 コンピュータは、人間が与えたデータ以上のことは理解できませんし、柔軟性や応用力が求められる場面では、依然として人間には遠く及びません。人工知能の研究は日々進歩していますが、人間のように経験を通して自ら学び、成長していくコンピュータの実現には、まだ時間がかかりそうです。
その他

AIを支える「知識の時代」

人工知能(AI)の歴史は、幾度もの盛衰を繰り返しながら発展してきました。その中で、「知識の時代」と呼ばれる時期は、AI開発に革新的な進歩をもたらした重要な時代として位置づけられています。これは、1970年代から1980年代にかけて起こった第二次AIブームと密接に関係しています。 第一次AIブームでは、コンピュータによる推論や探索といった能力に注目が集まり、特定の問題解決に特化したプログラムが開発されました。しかし、現実世界の複雑な問題に対応するには限界がありました。 そこで登場したのが、「知識」の概念を取り入れたAIです。人間の専門家のように、大量の知識を蓄積し、それを基に推論や判断を行う「エキスパートシステム」が開発されました。例えば、医療診断支援システムや化学物質の分析システムなどが実用化され、AIは特定の分野において人間の専門家を超える可能性を示しました。 この知識の時代は、AIが特定のタスクだけでなく、より人間に近い知能の実現を目指す転換点となりました。しかし、知識の表現方法や獲得の難しさ、状況の変化への対応力の不足など、新たな課題も浮き彫りになりました。これらの課題は、後の機械学習や深層学習といった技術の登場によって克服されていくことになります。
その他

専門家の知恵をコンピュータに:知識ベースとエキスパートシステム

- 知の宝庫知識ベースとは 知識ベースとは、私たち人間が日々蓄積してきた多種多様な知識を、コンピュータが理解し、活用できる形式に体系的に整理したデータベースのことです。まるで、人間の脳のように膨大な情報を蓄え、必要な時に取り出して利用できるように設計されています。 知識ベースには、専門家が長年の経験と勘に基づいて得たノウハウや、教科書に書かれているような客観的な事実、過去の事例やそこから得られたデータなど、あらゆる種類の知識を格納することができます。例えば、病気の診断や治療法、法律の解釈、製品の製造方法など、様々な分野の知識を蓄積することができます。 知識ベースは、いわば人工知能の頭脳を支える知恵の宝庫と言えるでしょう。人工知能は、この知識ベースにアクセスすることで、人間のように考えたり、問題を解決したりすることができるようになります。人工知能が様々な分野に進出していく中で、知識ベースはますます重要な役割を担っていくと考えられています。
ニューラルネットワーク

単純パーセプトロン:ニューラルネットワークの原点

- 人間の脳を模倣したモデル人間の脳は、複雑な情報処理をいとも簡単にこなす、驚異的な器官です。その高度な能力をコンピュータ上で再現したいという願いから、様々な研究が行われてきました。その中でも、特に注目されているのが「ニューラルネットワーク」です。これは、脳の構造を参考に作られた、全く新しい情報処理の仕組みです。ニューラルネットワークの研究は、まず人間の脳の最小単位である「ニューロン」の働きを模倣することから始まりました。そして、このニューロンの働きを単純化してモデル化したのが、「パーセプトロン」と呼ばれるものです。パーセプトロンは、複数の入力を受け取り、それぞれの入力に対して異なる重みを掛けて計算を行います。そして、その計算結果に基づいて、最終的に一つの値を出力します。これは、複数の神経細胞から信号を受け取ったニューロンが、それぞれの信号の強さに応じて発火するかどうかを決めている様子によく似ています。つまり、パーセプトロンは、脳の神経細胞が行っている情報処理を、単純な計算式に置き換えて表現したものだと言えるでしょう。そして、この単純な仕組みを持つパーセプトロンを多数組み合わせ、複雑にネットワーク化することで、より高度な情報処理を実現しようというのが、ニューラルネットワークの基本的な考え方です。パーセプトロンは、ニューラルネットワークの基礎となる、重要な要素です。そして、このパーセプトロンの登場により、人間の脳の仕組みをコンピュータ上で再現するという、大きな夢への第一歩が踏み出されたのです。
その他

第三次AIブーム:人工知能の新たな夜明け

人工知能という言葉が生まれてから、その発展は幾度かの期待と失望を繰り返してきました。まるで、熱い期待と失望の波が押し寄せるように、人工知能研究は進展と停滞を繰り返してきたのです。 1950年代後半から1960年代にかけての第一次人工知能ブームでは、コンピュータによる推論や探索といった能力に注目が集まりました。人間のように考え、問題を解決する機械の実現に向けて、多くの研究者が情熱を注ぎました。しかしながら、当時の技術力では、複雑で変化に富んだ現実世界の問題を解決するには至りませんでした。コンピュータの性能は限られており、扱えるデータ量も少なかったため、人工知能は限られた範囲でのみ力を発揮するにとどまったのです。 その後、1980年代に入ると、人工知能は再び脚光を浴びることになります。これが第二次人工知能ブームです。この時代には、専門家のもつ知識をルールとしてコンピュータに教え込む「エキスパートシステム」が開発され、医療診断や金融取引といった分野で一定の成果を収めました。しかし、この技術にも限界がありました。人間の知識は複雑で、すべてをルール化することは困難だったのです。また、エキスパートシステムは新たな知識を自ら学ぶ能力に乏しく、状況の変化に対応できないという問題点も抱えていました。そして、再び人工知能は冬の時代を迎えることになります。
その他

第五世代コンピュータ:日本の夢

- 第五世代コンピュータとは1980年代、日本は世界に先駆けて、未来のコンピュータ開発に名乗りを上げました。「第五世代コンピュータ」と名付けられたこの計画は、通商産業省が中心となり、国内の大手電機メーカーが総力を挙げて取り組みました。これまでのコンピュータは、決められた計算を高速に行うのが得意でしたが、第五世代コンピュータは、人間のように思考したり、言葉を理解したりする人工知能の実現を目指していました。これは、従来のコンピュータの延長線上にはない、全く新しい発想に基づく挑戦でした。この壮大なプロジェクトには、莫大な費用と時間、そして優秀な研究者たちが投入されました。しかし、人工知能の研究は予想以上に難航し、期待されたような成果を上げることはできませんでした。第五世代コンピュータの開発は、結果として目標を達成することはできませんでしたが、その過程で生まれた技術や知識は、その後の人工知能研究やコンピュータ技術の発展に大きく貢献しました。例えば、現在広く使われているインターネットや、音声認識、翻訳などの技術は、第五世代コンピュータの研究開発の過程で生まれた技術が基盤となっています。第五世代コンピュータは、日本の技術力の高さと、未来への挑戦に対する情熱を示す象徴的なプロジェクトとして、今も語り継がれています。
言語モデル

文章を操るAI:大規模言語モデルとは?

人間が日々、膨大な量の言葉に触れ、言葉を理解していくように、人工知能の世界でも言葉の学習が進んでいます。その中心となる技術が、大規模言語モデル(LLM)です。LLMは、インターネット上に存在する、ウェブサイトの記事や書籍、さらにはプログラムのコードなど、膨大な量のテキストデータを学習材料としています。人間が本を読んだり、会話を通して言葉を覚えるように、LLMもまた、これらのデータを読み込むことで、言葉の意味や使い方を学んでいくのです。 LLMが学習するデータは、まさに「ビッグデータ」と呼ぶにふさわしい、想像をはるかに超える量です。LLMはこの膨大なデータの中から、言葉のつながり方の規則性を見つけ出し、単語同士の関係性を分析します。その結果、LLMは、ある単語の次にどのような単語が続くのか、文章全体がどのような意味を持つのかを予測できるようになるのです。さらに、文脈に応じた適切な言い回しや、自然な文章の構成なども、データから学習していきます。 このようにして、LLMは人間のように言葉を理解し、文章を作成する能力を身につけていきます。LLMの登場は、まるで機械が人間の言葉を話すように感じさせる、人工知能における大きな進歩と言えるでしょう。
言語学習

コンピュータに常識を?Cycプロジェクトの挑戦

「人間にとって簡単なことは、コンピュータにとって難しい」という言葉があります。これは、人工知能の開発における長年の課題を表しています。私たち人間は、生まれてから日常生活の中で、特別な訓練なしに膨大な常識を自然と身につけていきます。例えば、「雨が降ったら傘をさす」「物は重力で下に落ちる」といった常識は、誰かに教えられなくても自然と理解し、行動することができます。 しかし、コンピュータにとっては、このような一見当たり前の知識を理解させることさえ非常に難しいのです。コンピュータは、人間のように経験を通して学習したり、状況に応じて柔軟に判断したりすることが苦手です。そのため、人間にとっては簡単なことでも、コンピュータにとっては複雑なプログラムが必要となります。 人工知能の研究では、コンピュータに常識を理解させるために、様々な方法が試みられています。例えば、大量のテキストデータを読み込ませることで、言葉の意味や関係性を学習させたり、現実世界のシミュレーションを通して、物体の動きや因果関係を学習させたりする方法などがあります。 コンピュータに常識を理解させることは、人工知能がより人間に近づき、私たちの生活を豊かにするために不可欠です。近い将来、コンピュータが当たり前のように常識を持ち、人間と自然にコミュニケーションをとることができるようになるかもしれません。
その他

意味ネットワークにおける所有関係「has-a」

人間のように考え、判断し、行動する人工知能は、私たちの生活に革新をもたらす可能性を秘めています。しかし、そのためには人工知能が人間と同じように世界のことを理解する必要があります。人工知能の世界では、現実世界の知識をコンピュータに理解させるための技術を知識表現と呼び、様々な方法が研究されています。 その中でも、意味ネットワークは、人間の思考プロセスを模倣した知識表現方法として注目されています。意味ネットワークは、まるで人間の頭の中を覗き込むかのように、概念と概念の関係性を視覚的に表現します。例えば、「鳥」という概念と「空を飛ぶ」という概念を線で結び、「鳥は空を飛ぶ」という関係性を表現します。さらに、「ペンギン」という概念を追加し、「鳥」と関連付けることで、「ペンギンは鳥の一種である」という知識も表現できます。このように、意味ネットワークは、概念と概念を関係性で結びつけることで、複雑な知識を表現することができるのです。 しかし、意味ネットワークは単純な構造であるがゆえに、曖昧な表現や例外的な知識を扱うのが難しいという側面も持っています。例えば、「すべての鳥が空を飛ぶわけではない」という知識を表現するためには、さらなる工夫が必要となります。人工知能がより高度な推論や学習を行うためには、意味ネットワークの表現能力を向上させるための研究が続けられています。
アルゴリズム

AIの知識表現:『part-of』の関係とは?

人工知能の世界では、人間の持つ複雑な知識をコンピュータに理解させることは大きな課題です。この課題に挑戦するため、様々な方法が研究されていますが、その中に「意味ネットワーク」という知識表現方法があります。 意味ネットワークは、私たち人間が頭の中で無意識に行っている概念の結びつきを、コンピュータでも扱えるようにネットワーク状に表現したものです。具体的には、「概念」を「ノード」と呼ばれる点で表し、「関係」をそれらのノードをつなぐ矢印で表します。 例えば、「鳥」という概念と「空」という概念があったとします。この二つは「鳥は空を飛ぶ」という関係で結びつけることができます。このように、様々な概念とその関係を繋いでいくことで、複雑な知識を表現していくことができます。 意味ネットワークは、AIに知識を教え、推論させ、新しい知識を発見させるための強力なツールとなりえます。例えば、AIが「鳥」と「空を飛ぶ」という関係を理解していれば、「ペンギンは鳥だが、空を飛べない」という新しい知識を自ら発見することも可能になるかもしれません。 しかし、意味ネットワークは万能ではありません。人間の知識は非常に複雑で、すべてを網羅することは難しいからです。それでも、意味ネットワークはAIの進化における重要な一歩であり、今後の発展が期待されています。
アルゴリズム

人工知能における「is-aの関係」とは?

- 知識表現と意味ネットワーク人間は膨大な知識を頭の中に持ち、それを巧みに操ることで思考や学習、問題解決などを行っています。人工知能の分野においても、コンピュータに人間の様な知能を実現させるためには、人間のように知識を理解させ、活用させる方法を探求することが不可欠です。これを目指す技術の一つが知識表現であり、その中でも意味ネットワークは重要な役割を担っています。意味ネットワークは、知識を視覚的に表現する手法であり、概念とその関係性を図式化することで、コンピュータが理解しやすい形に知識を構造化します。具体的には、意味ネットワークは「ノード」と「矢印」から構成されます。ノードは個々の概念を表し、例えば「鳥」や「動物」、「空を飛ぶ」といった具体的な概念がノードとして表現されます。一方、矢印は概念同士の関係性を示し、「鳥」と「動物」の関係であれば「鳥は動物である」といった「is-a関係」や、「鳥」と「空を飛ぶ」の関係であれば「鳥は空を飛ぶ」といった「属性関係」などを表します。このように、意味ネットワークは概念と関係を明確化することで、コンピュータに知識を理解させ、さらに複雑な推論を可能にします。例えば、「鳥は空を飛ぶ」と「ペンギンは鳥である」という知識から、「ペンギンは空を飛ぶ」という推論を導き出すことも可能です。しかし、現実世界ではすべてのペンギンが空を飛べるわけではないため、更なる知識の追加や関係性の修正が必要となる場合もあります。このように、意味ネットワークは知識を構造化し、コンピュータに推論を可能にする有効な手段ですが、現実世界の複雑さを完全に表現するには限界もあります。より高度な人工知能の実現には、意味ネットワークのさらなる発展や他の知識表現手法との統合が求められています。
言語モデル

文章を理解するAI技術:LLMとは?

- LLM言葉を理解する人工知能近年、人工知能(AI)の分野で「LLM」という技術が注目を集めています。これは「大規模言語モデル」の略称で、大量のテキストデータを学習させることで、まるで人間のように言葉を理解し、扱うことを可能にする技術です。従来のAIは、特定のタスクや専門分野に特化したものが主流でした。例えば、将棋やチェスをするAI、特定の病気の診断を支援するAIなどです。しかし、LLMは、小説、記事、コード、会話など、膨大な量のテキストデータを学習することで、人間のように自然な文章を生成したり、文脈を理解して質問に答えたりすることができるようになりました。LLMの登場は、AIの可能性を大きく広げるものです。例えば、カスタマーサービスでの自動応答システムや、文章作成の補助ツール、さらには、高度な翻訳システムなど、様々な分野への応用が期待されています。しかし、LLMは発展途上の技術でもあり、課題も残されています。例えば、学習データに偏りがあると、その偏りを反映した不適切な文章を生成してしまう可能性も指摘されています。また、倫理的な問題やプライバシーに関する懸念も存在します。LLMは、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めた技術です。今後、更なる技術開発や課題解決が進み、より安全で倫理的な形で社会に貢献していくことが期待されます。
その他

世界初のエキスパートシステム:DENDRAL

1960年代、まだ「人工知能」という言葉さえ一般的ではなかった時代に、スタンフォード大学のエドワード・ファイゲンバウムは、未知の有機化合物を特定する画期的な人工知能プログラム「DENDRAL(デンドラル)」を開発しました。 DENDRALは、物質の質量を測定することでその成分を分析する手法である質量分析法の結果を入力データとして使用します。 未知の物質の質量分析データを入力すると、DENDRALは内部に組み込まれた膨大な有機化学の知識と、その知識に基づいて物質の構造を推論するための規則を用いて、その物質がどのような構造式を持つ化合物であるかを予測します。 質量分析法の結果から、考えられる化合物の構造式の候補をいくつか挙げ、そこから可能性の高いものを絞り込んでいくことで、最終的に最も妥当な構造式を提示します。これは、当時としては画期的なことであり、コンピュータが人間の専門家のように複雑な問題解決を行うことができることを示した最初の例の一つとなりました。 DENDRALの開発は、人工知能研究における大きなマイルストーンとなり、その後の専門家システムや知識ベースシステムなどの発展に大きく貢献しました。
その他

エキスパートシステムと医療診断:マイシンの影響

コンピュータに専門家のように考えさせ、問題を解決させようという試みから、エキスパートシステムは生まれました。これは、特定の分野における熟練者の知識や経験をプログラムに組み込むことで、その道のプロのように判断し、助言を提供できるようにすることを目指した技術です。人間だけが持つと思われていた高度な知的処理を機械で実現しようとしたこの試みは、人工知能研究の黎明期における大きな挑戦の一つでした。 エキスパートシステムは、専門家の知識を「ルール」という形で表現し、コンピュータに理解させます。例えば、「もし熱が38度以上あれば、インフルエンザの可能性があります」といった具合です。そして、利用者からの質問に対して、蓄積されたルールを元に推論を進め、最も適切と思われる答えを導き出します。 初期のエキスパートシステムは、医療診断や化学分析など、限られた分野では一定の成果を収めました。しかし、専門家の知識を網羅的にルール化することの難しさや、状況の変化に対応できないなどの限界も明らかになりました。それでも、エキスパートシステムの開発は、コンピュータに高度な知的処理をさせようという試みの先駆けとなり、後の機械学習や深層学習といった技術の発展に大きな影響を与えました。
その他

人工知能に見る錯覚:イライザ効果とは

1960年代、人と機械の距離を縮める画期的なプログラムが登場しました。マサチューセッツ工科大学のジョセフ・ワイゼンバウム博士によって開発された「イライザ(ELIZA)」です。イライザは、人が入力した言葉を分析し、まるで人と話しているように返答する画期的なプログラムでした。 たとえば、人が「疲れた」と入力すると、「なぜ疲れているのですか?」と質問を返したり、「母について話したい」と入力すると、「お母様について詳しく教えてください」と促したりするなど、まるで親身になって話を聞いてくれるカウンセラーのような受け答えで多くの人を驚かせました。 イライザは、入力された言葉を文法的に分析し、あらかじめ用意されたパターンに当てはめることで、自然な受け答えを実現していました。しかし、実際には人の感情を理解していたわけではなく、あくまでもプログラムに従って返答していたに過ぎませんでした。 それでも、イライザとのやり取りは、多くの人に衝撃を与え、機械とのコミュニケーションの可能性を強く印象付けました。そして、その後の人工知能研究や自然言語処理技術の発展に大きな影響を与えたのです。
アルゴリズム

人工知能はボードゲームを攻略できるか?

ボードゲームとは、チェス盤、将棋盤、囲碁盤のように、決められた区画に区切られた盤の上で、駒を使って遊ぶゲームのことです。これらのゲームは、古代から世界中で楽しまれてきました。 なじみ深いものでは、将棋や囲碁、チェスなどが挙げられます。 これらのゲームは、単に駒を動かすだけでなく、相手の動きを読み、戦略を立てていくことが重要になります。そのため、思考力を鍛えるためのツールとしても人気があります。近年では、コンピュータ技術の進歩により、人工知能がチェスや将棋といった複雑なボードゲームに挑戦するようになり、注目を集めています。人工知能がプロ棋士に勝利する事例も出てきており、その思考能力の高さに驚かされています。また、近年では、従来のボードゲームに加え、新しいルールや要素を取り入れた、多種多様なボードゲームが登場しています。 これらのゲームは、家族や友人と楽しむのはもちろんのこと、一人でも楽しむことができます。 ボードゲームは、子供から大人まで、幅広い世代に楽しまれている、魅力的な娯楽と言えるでしょう。
アルゴリズム

ゲームAIを支えるαβ法:探索を効率化する賢いアルゴリズム

将棋やチェスのような複雑なゲームでは、勝利に繋がる最善の一手を指すことが重要となります。しかしながら、ゲームの性質上、考えられる全ての盤面を全て検討することは、人間はもちろん、コンピューターであっても不可能です。そこで重要となるのが「探索」という考え方です。 探索とは、可能な手をある程度まで実際に指してみることで、その先にある結果を予測し、最善の手を導き出すことを指します。例えば、将棋であれば、持ち駒をどのように使うか、どの駒をどのように動かすかなど、様々な選択肢が存在します。これらの選択肢を一定の手数まで実際に指してみて、その結果、自分が有利になるか、不利になるかを評価していくのです。 もちろん、闇雲に指してみたところで、効果的な探索とは言えません。限られた時間の中でより的確に状況を判断するために、探索には高度なアルゴリズムが用いられます。これらのアルゴリズムは、過去の対局データや、盤面の状況などを分析し、より可能性の高い選択肢を優先的に探索するよう設計されています。 このように、ゲームにおいて「探索」は非常に重要な役割を担っています。コンピューターが人間を凌駕する強さを獲得した背景には、この「探索」の技術が飛躍的に進歩したことが大きく影響しています。
ニューラルネットワーク

AlphaGo:人工知能が切り拓く未来

近年、科学技術の進歩は目覚ましく、私たちの暮らしは日々変化しています。その中でも特に注目されているのが、人工知能(AI)技術の進展です。AIとは、まるで人間のように考えたり、学んだり、問題を解決したりする能力を持ったコンピューターシステムのことを指します。かつては空想科学の世界の話と思われていたAIが、今や現実のものとなりつつあり、私たちの社会に大きな影響を与え始めています。 AIは、すでに様々な分野で活用されています。例えば、スマートフォンの音声アシスタント機能や、インターネットショッピングサイトの商品推薦システムなどにもAI技術が活用されています。また、自動車の自動運転技術や、病気の診断支援など、私たちの生活をより安全で快適にするために、AI技術の研究開発が進められています。 AI技術の進展は、私たちの社会に大きな変化をもたらすと期待されています。例えば、これまで人間が行ってきた複雑な作業をAIが代わりに行うことで、仕事の効率化や生産性の向上が期待できます。また、AIによる新しいサービスや製品が生まれることで、私たちの生活はより豊かになるでしょう。 一方で、AI技術の発展によって、仕事が奪われるのではないかという懸念の声も上がっています。また、AI技術が悪用される可能性も否定できません。AI技術のメリットを最大限に活かし、デメリットを最小限に抑えるためには、AIと人間がどのように共存していくのか、しっかりと考えていく必要があります。
その他

AIの歴史を語る「トイ・プロブレム」

- トイ・プロブレムとはトイ・プロブレムとは、複雑な現実の問題を単純化したもので、まるで玩具のように扱える問題のことです。例えば、迷路の最短経路を見つけ出す問題や、オセロで勝つための戦略を考える問題などが、トイ・プロブレムの代表的な例として挙げられます。これらの問題は、ルールや目的が明確で、コンピュータにも理解しやすい形で表現できるという特徴を持っています。初期のAI研究では、トイ・プロブレムを解くことを通して、人間の思考プロセスを模倣しようと試みていました。複雑な現実の問題を解くには、まずこれらの単純化された問題を解決することで、基本的な問題解決能力をAIに学習させる必要があったのです。トイ・プロブレムは、現実世界の問題に比べると単純すぎるという批判もあります。しかし、トイ・プロブレムを解くことで得られた知識や技術は、より複雑な問題を解決するための基礎となり、AIの進歩に大きく貢献してきました。例えば、迷路探索のアルゴリズムは、カーナビゲーションシステムの経路探索などに応用されています。近年では、AIの研究対象は、現実世界の問題にシフトしつつあります。しかし、トイ・プロブレムは、AIの基本的な動作原理を理解したり、新しいアルゴリズムを開発したりする上で、依然として重要な役割を担っています。
言語学習

人工知能の言葉の理解:トークン化とは?

- 人工知能と自然言語処理人工知能は、まるで人間のように思考し、新しいことを学び、直面した課題を解決できる能力をコンピューターシステムに備えさせようという試みです。その応用範囲は広く、自動運転や医療診断など、多岐にわたる分野で革新的な変化をもたらしています。自然言語処理は、この人工知能の一分野であり、人間が日常的に使う言葉をコンピューターに理解させることを目指しています。これは、人間とコンピューターのコミュニケーションをより円滑にする上で非常に重要な技術です。例えば、私たちが普段何気なく利用している音声検索や機械翻訳、チャットボットなどは、自然言語処理技術によって支えられています。自然言語処理において、特に重要な役割を担っているのが「トークン化」と呼ばれる処理です。トークン化とは、文章を単語や句読点などの意味を持つ最小単位に分割することです。例えば、「今日は良い天気ですね。」という文章は、「今日」、「は」、「良い」、「天気」、「です」、「ね」、「。」というように分割されます。このトークン化は、コンピューターが文章を理解するための最初のステップと言えるでしょう。なぜなら、コンピューターは文章をそのまま理解することはできず、意味を持つ最小単位に分解することで初めて処理が可能になるからです。このように、人工知能の進歩、特に自然言語処理の進化は、私たちの生活に大きな変化をもたらしています。そして、その進化を支えるトークン化は、人間とコンピューターの距離を縮める上で欠かせない技術と言えるでしょう。
言語モデル

積み木の世界を動かすSHRDLU

- SHRDLUとはSHRDLU(シュルドゥルー)は、今から約50年ほど前の1960年代後半に、テリー・ウィノグラードという人物によって生み出された、当時としては画期的なコンピュータプログラムです。その名前は、タイプライターのキー配列の2段目に並ぶ文字列「SHRDLU」に由来しています。SHRDLUが人々を驚かせたのは、その高度な自然言語処理能力です。 SHRDLUは、人間が日常的に使う英語の指示を理解し、その通りに仮想空間の中で様々な物体を動かしたり、積み上げたりすることができました。例えば、「赤いブロックを青い箱の上に乗せて」といった複雑な指示であっても、SHRDLUは正確に理解し、実行することができました。SHRDLUが扱ったのは、ブロックや球体、円錐といった単純な形状の物体で構成された仮想空間でした。しかし、SHRDLUはこれらの物体の位置や色、大きさなどを認識し、さらに「上」「下」「左」「右」といった空間的な関係性も理解していました。そのため、ユーザーはまるで現実世界で物を動かすように、SHRDLUに指示を出すことができたのです。SHRDLUは、人工知能の初期の成功例として、その後の自然言語処理やロボット工学の研究に大きな影響を与えました。ただし、SHRDLUは限られた数の物体と指示しか扱うことができず、現実世界の複雑さには対応できませんでした。それでも、SHRDLUの登場は、コンピュータに人間の言葉を理解させ、複雑な作業をさせるという夢を実現するための大きな一歩となりました。
その他

人工知能の栄枯盛衰

人工知能の分野は、これまで幾度となく大きな注目を浴びてきました。まるで熱い視線を一身に浴びる人気俳優のように、その登場のたびに人々は熱狂し、未来に大きな夢を託してきたのです。しかし、その熱狂は期待通りの成果が得られない現実に直面すると、急速にしぼんでいきました。まるで冬の寒さにさらされた花のように、人々の関心は冷え込み、人工知能は冬の時代を迎えることになります。 これまで人工知能は、まさにこのような期待と失望のサイクルを三度も繰り返してきました。第一次ブームの火付け役となったのは、コンピュータによる推論や探索といった能力でした。チェッカーのようなゲームで人間を打ち負かすコンピュータの姿は、多くの人々に衝撃を与え、人工知能が近い将来、人間の知能を超えるのではないかと期待させました。 しかし、当時の技術では、複雑な現実の問題を解くことはできませんでした。過剰な期待は失望へと変わり、人工知能は冬の時代へと突入していきます。 二度目のブームでは、コンピュータに大量の知識を教え込むことで、専門家のような判断をさせようという試みが行われました。しかし、この試みもまた、知識表現の限界や、状況に応じた柔軟な対応の難しさに直面し、再び冬の時代を迎えることになります。 そして現在、私たちは三度目のブームの中にいます。深層学習と呼ばれる技術の登場により、人工知能は再び大きな期待を集めています。しかし、過去の二度のブームから学ぶことがあるはずです。人工知能は万能ではありません。過剰な期待を持つことなく、その可能性と限界を見極め、着実に研究開発を進めていくことが重要です。
その他

人工知能の誕生:ダートマス会議

1956年の夏、アメリカ合衆国北東部に位置するニューハンプシャー州ハノーバーのダートマス大学で、後世に語り継がれる重要な会議が開かれました。主催者は、当時まだ若手研究者であったジョン・マッカーシー氏。テーマは、「人工知能」でした。この会議は、世界で初めて「人工知能」をテーマに掲げた学術会議として、歴史に名を刻むことになります。しばしば「ダートマス会議」と略称されることもありますが、正式名称は「ダートマス夏季人工知能研究会」といい、わずか2ヶ月という短い期間で開催されました。 この会議には、のちに人工知能研究の分野で世界的な権威となる錚々たる顔ぶれが集まりました。情報理論の創始者として知られるクロード・シャノン、コンピュータチェスプログラムの先駆者であるアーサー・サミュエル、万能記号言語の開発者として知られるアレン・ニューウェル、そして経済学や心理学など幅広い分野で活躍したハーバート・サイモンなど、そうそうたるメンバーです。 彼らは、会議の期間中、人工知能の可能性と課題について熱心に議論を交わしました。そして、「学習」「推論」「問題解決」といった人間の知的能力を機械で実現するという壮大な目標を掲げ、互いに協力して研究を進めていくことを誓い合ったのです。この会議は、単に人工知能という新しい研究分野を確立するだけでなく、その後のコンピュータ科学や情報技術全体の発展に計り知れない影響を与えることになりました。
アルゴリズム

コンピュータが問題を解く時代 – 推論と探索の世界

人間が複雑な問題に直面した時、それを解決するために頭脳を駆使します。計算機が登場して以来、人間は、この複雑な思考過程を機械に模倣させることができないかと考え始めました。初期の計算機はもっぱら計算に秀でていましたが、やがて研究者たちは、計算能力を超えて、より人間の思考に近い「推論」や「探索」といった能力を計算機に与えようとし始めたのです。 例えば、チェスや将棋のようなゲームを考えてみましょう。これらのゲームでは、膨大な数の組み合わせの中から最善手を導き出す必要があります。かつては人間の得意分野と考えられていたこれらのゲームにも、計算機の能力は及び始めました。これは、計算機が膨大なデータからパターンを学習し、状況に応じて最適な行動を選択できるようになったことを意味します。 このように、問題解決への挑戦は、計算機が人間の思考プロセスをいかに模倣し、さらには超えていけるのかを探求する旅でもあります。人工知能の進歩は、医療診断、自動運転、新薬開発など、様々な分野で問題解決に貢献する可能性を秘めています。そして、私たち人間は、計算機という強力なパートナーと共に、より複雑な問題に挑戦し、より良い未来を創造していくことができると言えるでしょう。