データ中心のAI:AI開発の新たな潮流
- データ中心のAIとは
人工知能(AI)の開発手法は、近年、大きな転換期を迎えています。従来は、いかに優れた性能を持つモデルやアルゴリズムを構築するかに焦点が当てられてきました。しかし、近年注目を集めている「データ中心のAI」は、その名の通り、データそのものに重点を置いた、新しいアプローチです。
従来型のAI開発では、データはあくまでもアルゴリズムの性能を引き出すための材料の一つと捉えられていました。しかし、どれだけ精巧なアルゴリズムを構築しても、入力されるデータの質が低ければ、AIの性能は期待通りにはなりません。これは、人間が偏った情報や誤った情報に基づいて判断を下すと、適切な結論に至らないのと似ています。
データ中心のAIは、この点に着目し、「質の高いデータこそが、高性能なAIを実現するための鍵」という考え方に基づいています。具体的には、データの収集、クリーニング、前処理、そしてラベリングといった、データに関わるあらゆる工程を徹底的に見直し、改善していくことを重視します。
例えば、AIに画像認識を学習させる場合、従来は大量の画像データを集めることに主眼が置かれていました。しかし、データ中心のAIでは、画像データの質、つまり、画像の解像度や明るさ、対象物の位置や角度などが適切かどうか、ノイズや歪みがないか、といった点に注意を払います。さらに、それぞれの画像にどのようなラベルを付与するか、といったアノテーション作業の精度も重要な要素となります。
このように、データ中心のAIは、データの質にこだわり抜くことで、より高精度で信頼性の高いAIの実現を目指しています。