エキスパートシステムの先駆け: マイシン
ある特定の専門分野における熟練者の知識や経験をコンピュータプログラムに組み込み、その分野の専門家のように高度な問題解決や判断を可能にするシステムを、専門家システムと呼びます。人間は長年の経験を通して、膨大な量の知識や経験を蓄積していきます。専門家システムは、この貴重な知識を形式化し、誰でも利用できるようにすることを目指しています。
専門家システムの核となるのは、専門家の知識をルールや推論エンジンといった形で表現することです。ルールとは、「もしAならばBである」といったように、特定の条件下における行動や結論を明確に定義したものです。例えば、医療診断の分野であれば、「もし患者の体温が38度以上で、咳が出て、喉が赤いならば、風邪の可能性が高い」といったルールが考えられます。
推論エンジンは、これらのルールに基づいて、入力された情報から適切な結論を導き出す役割を担います。これは、人間が論理的な思考によって問題を解決する過程と似ています。専門家システムは、大量のルールやデータに対して高速な処理を行うことができるため、人間よりも短時間でより正確な判断を下すことが期待できます。
専門家システムは、医療診断や金融取引、機械設計など、様々な分野で応用されています。特に、高度な専門知識が求められる分野や、複雑な問題を迅速に解決する必要がある分野において、その効果を発揮します。